小児近視抑制治療
学校眼科検診で視力低下のプリントをもらい、眼科受診で近視が見つかった場合、以前は眼鏡処方をしていただけの外来でした。そして学年が上がるにつれ近視が進行するため、その度に眼鏡を調整をしていました。私自身も小学校高学年の頃から近視眼鏡をしておりました。しかし昨今はさまざまな学童近視の進行予防方法が報告され、自由診療内ではありますが当クリニックでも近視進行予防治療が一部可能となりましたので、まずは小児の近視ついて簡単に述べようと思います。
日本の近視事情
近視有病率は日本では令和3年度の学校保健統計調査で、裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は小学校で36.9%、中学校で60.3%、高校64.4%と報告されています。そして右肩上がりで増加しているのが現状です。コロナ禍でICT化教育が急速に勧められ、近視化に拍車がかかっており深刻な問題となっています。
実は世界的にも近視、強度近視の有病率は増加傾向で、2050年には世界人口の約50%が近視、約10%が強度近視になるという予想もあります。日本で行われた研究では、35〜80歳の近視有病率がすでに50%、強度近視有病率が7.9%と報告されています。特に若年者(35から59歳)では70%が近視、約10%が強度近視であり、更なる増加が予測されています。小児の近視有病率はとりわけ東アジア先進国で高く、ヨーロッパで約40%に対して東アジアでは60%と報告されています。
近視進行予防治療の重要性
それではなぜ近視進行抑制治療が必要なのでしょうか。強度近視の合併症に緑内障、白内障、網膜剥離、などがあります。そのリスクは近視度数が1D増すごとに20%、21%、30%増加するとの報告があります。そのため近視化が進む小児期に将来の失明につながるような合併症を減らすことができます。
両親の近視の影響
香港での報告では、両親の近視が軽度(−3Dより軽度)であれば、近視のリスクは増加しない一方で、中等度の近視(−3D 〜 −6D)であれば片親のみでもリスクが生じ、特に両親ともに強度近視の場合、リスクは11.22倍です。
次回は近視抑制治療法についてお話しします。